帰路回想

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深夜のファミレスから自宅まで自転車で二十分弱

高校生ぶりにチャリンコで中距離移動

風を切る感覚 すこしティーンに戻る

人影は見当たらない 駆けてく中 猫が数匹

暗闇にひかる白猫はゆっくりとこちらを見た

人と共に寝静まった街 等間隔コンビニのリズム

光に吸い寄せられる虫の如く 車輪を止め 眺める

人の気配 少し安心してまたペダルを漕ぐ

早く帰りたかった 夜も遅いし

何より 夜がこわいし

電波塔の下にはおばけが集まるらしい

小学生の頃の記憶ってそんなのばっかりだ

ナイトクルージングを口遊みながらひたすらに漕ぐ

進めど進めど 仄暗い街灯とコインパーキングの空の文字

知っている道は工事中につき行き止まり

迂回せざるを得ない 必死に漕いで来たということ

いつまでもおおきな夜の帳から抜け出せない焦燥感からじとりとした汗が額に垂れる

わたしは夜が苦手なんだった 

ひとりだと 外にほっぽりだされたこどものきもち

こんなに世界は広かったんだと 薄墨色の空をみておもった 途端になぜだかさみしくなった 月もぼやけてみえないし

お家に帰ってもひとりだけど 

灯りがある テレビを点けたら誰かさんと会える 

再びわたしはわたしのお家めがけて自転車を漕いだ

見慣れた川もぬらぬらとしていてこわかった

選挙ポスターが並んだ大きな板でさえ顔が沢山あるのが気味が悪く感じて誰とも目を合わさないようにしながら坂をのぼった 

あとすこし 脚に力を込める 

やっと着いたマイスイートホーム 

いつもより静かでグレイだった

ドアが閉まる音 なぜか蒸し暑い玄関 

まだこの部屋の匂いでは安堵できない

お風呂にあついお湯をためている間 

ポストに定期投函される小さな花束をわけ 四瓶の花瓶に挿していく 丁寧に 

その内の二瓶は益子で作った益子焼きの一輪挿し

お気に入りなので特にかわいい花を選ぶ 

普段通りの生活をしていたらいつの間にか色に囲まれていた 

朝の予感がする 

新しいページのめくれる音がする

夜があったから